路地とまち

サンプランナーズ代表取締役 今井晴彦

まちの在り様は路地に大きく影響されているということにふと気が付いたのは、今から20年ほど前のことです。大学で教えられる近代都市計画、その後の仕事で携わる都市計画の業務で登場する道路というものとは、大きく異なる存在にようやく気が付いたわけです。だいたい日本の道というのは、明治以前にはほとんど路地です。街道といっても路地のようなところも多く、いまだに地図をながめれば大半は路地でしょう。近代から多大な金をつぎ込んで建設してきた道は、もっと幅広く、しかも人のためというより車の通行のためにできています。人間はその片隅を歩くことを許されているに過ぎないようなものです。

路地に定義もありませんし、呼び方も地域で様々です。ただまちにとっていまだに車が走り回る道路と異なった役割を発揮しています。子供が自由に遊べる場であったり、隣近所の立ち話ができるなどコミュニティを支えています。表道路沿いに比べて、地価も安い、賃料も安い、ということで、お金のない人が住める、或いは駆け出しの企業が始められる場でもあります。

例えば江戸時代だと、新たに地方から出て来て、まず裏長屋に住み着き、俸手ふりで働き、金がたまったら表通りに店を構えるという具合です。今でも表通りは大会社やチェーン店がひしめいていますが、路地に入れば、個店やアーティストや若者が多いいというわけです。また路地は歴史的に近代道路より古くから存在していますから、そこには社寺仏閣だったり歴史的建造物なども多く、観光集客に役立ったりもします。帰りに一杯というのもまたビルの中でやるより、風情のある路地裏のお店のほうが落ち着く人も多いかもしれません。

このように近代の道路は、その空間の機能を規定してしまい、それ以外の行為は許さない、特に効率的に移動するため空間とされているため、路地のようにはいきません。路地は近代以前、空間規定されていない古い時代の世界を今に伝えているというわけです。全国、世界に魅力ある路地が一杯あります。是非探訪してください。

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今井晴彦

ホスト都市(実行委員会)の自由な発想のもと、路地をキーワードにシンポジウムやワークショップ、まち歩きなどを行っています。

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